小売業界の最前線！新業態がもたらす変革の波

近年、消費者のニーズは急速に変化しています。
デロイトの2024年度「国内消費者意識・購買行動調査」によると、新型コロナウイルスによる様々な混乱や制約から解放された一方で、物価高騰や円安などが消費者に大きな影響を与えているとしています。調査対象者の約3割が「節約と贅沢のメリハリをつけるようになった」や「コストパフォーマンスを意識するようになった」と回答しており、購買行動に対する慎重さが高まっていることがうかがえます。

さらにオンラインショッピングや比較サイト、SNSの普及により、商品の選び方や買い方の多様性も広がっています。このような消費者ニーズや購買行動の変化を受けて、近年多くの小売企業が新業態の導入に取り組んでいます。

参考：デロイト 2024年度 消費者意識・購買行動調査

イトーヨーカ堂は2025年3月、原宿の竹下通りにエンタメ特化型の新業態店舗「TOYLO MART（トイロマート） 原宿店」をオープンしました。
この店舗では7000～8000SKUのトレンド性の高い商品を取り揃え、特にキダルト層（※）を意識した品揃えが特徴です。

玩具市場の売上は少子化にもかかわらず過去最高を記録しており、これはキダルト層によるガチャガチャやトレカなどの市場拡大が主な要因となっています。

イトーヨーカ堂は、コロナ禍でアパレル事業が厳しい中、ストリーミングサービスの普及を受けたアニメブームの高まりを背景に、トレンドとなっている「キャラクターグッズ」を強化し、ターゲット層の拡大や、ユニークな購買体験による付加価値の提供を行っています。

※キダルト：「子供（Kid）」と「大人（Adult）」を組み合わせた造語。子供時代に愛着を持ったものを続けて楽しむ大人のこと。

参考：イトーヨーカドー／新業態「トイロマート 原宿店」オープン、キダルトの集客見込む

（MaisonAIを使って画像を生成）

丸善ジュンク堂書店は2025年4月、東京都港区の虎ノ門ヒルズ「グラスロック」に新業態店舗「magmabooks」をオープンします。
この店舗では、従来のジャンル別書棚に加えて、「本を探す」書店から「本と出会う」書店として、テーマごとに編集された本棚も設けられます。また、ギャラリースペースでの展示やコラボイベントを実施し、リラックスできる有料ラウンジも併設する予定です。

読者が本を読む前（読前）、最中（読中）、そして読み終わった後（読後）も楽しめる体験型書店として、従来の販売にとどまらず、サービスを拡充し、新しい顧客体験の提供を行うとしています。

参考：虎ノ門ヒルズ／「グラスロック」にジュンク堂書店の新業態店舗4／9オープン

ヘッドウェア＆アパレルのグローバルブランド、ニューエラは2024年12月に新業態の第1号店舗「NEW ERA KIOSK NAGOYA STATION（ニューエラキオスク名古屋駅）」を名古屋駅地下街の商業施設「ゲートウォーク」にオープンしました。
近年、ワーク・ライフ・バランスの推進やリモートワークの普及などにより、ライフスタイルやニーズの多様化が進んでいます。この店舗は、営業時間が朝8時から夜10時までと長めに設定されており、さまざまなライフスタイルを持つ幅広い客層への対応を可能にしました。また、展開商品は毎週変わるなど、多様化するニーズに応えるよう、さまざまな新要素を取り入れています。

背面のLEDパネルには、販売アイテムの一覧を表示するなど「クイックなショッピング」をテーマに、出張や国内外の旅行者が多く訪れる立地を活かし、より気軽に立ち寄れる店舗を新たに提案しています。

参考：ニューエラ／名古屋駅地下街「ゲートウォーク」に新業態「NEW ERA KIOSK」オープン

（MaisonAIを使って画像を生成）

消費者のニーズの多様化に応じて、小売り企業が提供するサービスの幅は、従来の枠を超えた広がりを見せています。この変革により、企業は商品販売だけでなく、顧客との接点を増やし、ブランドの価値を高めるための戦略へとシフトしています。

こうした新業態の数々は、消費者との関係を深くさせ、競争優位を築くための重要な柱となりえます。デジタルの進化やニーズの多様化に併せて、今後もこの変革の波は続くと考えられ、企業は市場の動向を注視しながら柔軟な業態進化を遂げていく必要があります。